経審におけるその他の審査項目(社会性)
建設業の経営事項審査において、その他の審査項目(社会性等)という評価項目があります。
これは、「その他の」とされているように、様々な観点から点数が加減されることになります。
総合評定値(P)に占める割合は15%となっています。
審査項目は大まかに次の通りとなっています。
建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況 |
建設業の営業継続の状況 |
防災活動への貢献の状況 |
法令遵守の状況 |
建設業の経理の状況 |
研究開発の状況 |
建設機械の保有状況 |
ISO、エコアクション21の登録の状況 |
建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
その他の審査項目(社会性等)の項目での1つとして、建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況があります。
保険や補償関係
- 雇用保険に加入しているか
- 健康保険に加入しているか
- 厚生年金保険に加入しているか
- 建設業退職金共済制度に加入しているか
- 退職一時金または企業年金制度を導入しているか
- 法定外労働災害補償制度に加入しているか
- ①、②、③については、加入していなければ大幅に減点されます。適用除外の場合は減点されません。
- ④、⑤、⑥については、加入、導入していれば加点されます。
若年技術者の確保
若年者の雇用状況により加点評価される場合があります。
これは、技術職員名簿に記載されている職員の年齢で判断されることになります。
具体的には、2つの評価基準があり、それぞれ基準をクリアしているとそれぞれで加点されます。
- 満35歳未満の技術職員が名簿全体の15%以上
- 技術職員名簿に新規掲載された35歳未満の者が1%以上
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
雇用する技術者及び技能者の知識及び技術又は技能の向上に努めている企業が加点評価されます。
技術者
建設業者に所属する技術者が、審査基準日以前1年間に取得したCPD単位の平均値により評価されます。
技能者
建設業者に所属する技能者のうち、認定能力評価基準により受けた評価が審査基準日以前3年間に1以上向上(レベル1からレベル2等)した者の割合により評価されます。
ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況
女性の活躍や若者の雇用を推進を図るため、それらに関する法律に基づく認定を受けていれば経審において加点されるというものです。
下記の中で取得している認定のうち最も配点の高いものが評価されます。
例えば、「プラチナえるぼし」と「くるみん」を認定されている場合、「プラチナえるぼし」の5点が加点されます。
女性活躍推進法に基づく認定
認定の区分 | 配点 |
---|---|
プラチナえるぼし | 5 |
えるぼし(第3段階) | 4 |
えるぼし(第2段階) | 3 |
えるぼし(第1段階) | 2 |
次世代法に基づく認定
認定の区分 | 配点 |
---|---|
プラチナくるみん | 5 |
くるみん | 3 |
トライくるみん | 3 |
若者雇用促進法に基づく認定
認定の区分 | 配点 |
---|---|
ユースエール | 4 |
営業年数
建設業の営業継続の状況というものがあります。
これは、建設業の許可または許可以前の制度である登録を受けてからの年数を評価します。もちろん、長い方が点数は高くなります。
個人事業から法人に組織を変更し営業する場合、条件をクリアできれば、営業年数を引き継ぐことができる場合もあります。
また民事再生法または会社更生法の適用がある場合、大幅に減点される上、営業年数も0年になってしまうので注意が必要です。
防災協定締結の有無
国や地方公共団体との間で、防災協定を締結していると加点されます。
何か災害が起きた時に、防災活動等における建設業者の役割等について協定として結ぶものです。これは、建設業者が単独で官公庁と防災協定を締結しても良いですし、加入している団体が官公庁と防災協定を締結している場合でも加点の対象となります。
法令遵守の状況
審査項目のW点の一つに法令遵守の状況があります。
これは、審査対象の期間内に営業停止処分や指示処分を受けたことがある場合、減点評価されるものです。建設業法やその他法令を守り、適正に営業していくことが必要となります。
また、経審において、虚偽の申請をすることは、営業停止や、許可取消の可能性もありますので注意が必要です。
経理の状況
建設業の経理の状況があります。
この内容は、2つの項目からなっています。
1つ目は、監査の受審状況、2つ目は公認会計士等の数となっています。
① 監査の受審状況
次の場合に加点されます。
- 会計監査人を設置
- 会計参与の設置
- 社内の経理責任者による自主監査
②公認会計士等の数
常勤の役職員の内、定められた資格を持っている場合加点されます。
- 公認会計士として登録し、研修を受講した者
- 税理士として登録し、研修を受講した者
- 経理士試験1級合格または講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 経理士試験2級合格または講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
最終的にこの項目を計算する場合、年間平均完成工事高に応じて相対的な評価となります。
研究開発の状況
その他の審査項目(社会性等)では、様々な観点から審査されますが、研究開発の状況により加点される場合があります。
これはその通り、研究開発にかけた費用が評価されます。
しかしこの項目の対象になるのは、会計監査人を設置している会社のみとなります。
建設機械の保有状況
建設機械の保有状況により加点評価される場合があります。
対象となるのは、ショベル系掘削機やブルドーザー、大型ダンプ車などとなります。
自ら所有するか、リース契約でも対象となります。
ただしリースの場合は、審査基準日から1年7カ月以上の契約期間が残っている必要があります。残っていない場合でも自動更新されるようであれば認められる可能性もあります。
またこの部分については、少ない保有台数でも点数がアップするよう基準の改正がありました。
最大15台で15点は変更はありません。
ISOやエコアクション21
ISO9001またはISO14001やエコアクション21の登録を受けていると、加点評価されます。
ただし、認証範囲に建設業が含まれている必要がありますし、基本的には会社全体で登録されている必要があります。